2016年7月3日
【5人制(ブラインド)サッカー PREVIEW】地元ブラジルの4連覇なるか
決勝トーナメントに駒を進めるのは?
2004年のアテネ大会で初めてパラリンピック競技に採用されて以降、ブラインドサッカー(5人制サッカー)はブラジルが3大会連続で金メダルを獲得した。世界選手権でも2010年大会と2014年大会を連覇。選手個々の技術面でも、チームとしての戦術面でも、世界のブラインドサッカーをリードする最強国だ。そのブラジルが、地元でパラリンピック4連覇に挑む。
ブラジルと同じグループAに入ったのは、モロッコ、トルコ、イランの3ヵ国。ちなみに日本は、アジア予選でイランと勝ち点1の差でリオ行きを逃した。ここはイランに勝ち上がってもらい、アジアのレベルの高さを証明してほしいところだ。その可能性は十分にある。
ただしこの3ヵ国は、いずれもパラリンピックや世界選手権でベスト4以上に進出した経験がない。実力的に、ブラジルの首位通過はほぼ確実だろう。だが、そこから先は決して楽ではない。2年前の世界選手権、ブラジルは準決勝で中国に先制を許し、辛くも逆転勝ちした。続く決勝でもアルゼンチンの堅守に苦しみ、0-0のまま延長戦に突入。誰もがPK戦を覚悟した終盤に、ようやくジェフェルソンの決勝ゴールが決まっている。2014年のサッカーワールドカップで地元ブラジルが惨敗したように、ホスト国であるがゆえの精神的重圧がかかることを考えれば、タフな戦いになるのは間違いない。
しかもブラジルは、脚を故障したエースのリカルド・アウベスの出場が微妙な状態である。自由自在な高速ドリブルと恐ろしいほど正確なシュート力で他の追随を許さない世界ナンバーワンのアタッカーだが、3月の中国遠征も6月の親善大会(リオ)も欠場。懸命のリハビリを経てパラリンピック本番に間に合ったとしても、しばらく実戦から離れているのは不安材料だ。
もっとも、ブラジルはリカルドひとりのチームではない。ブラインドサッカーは基本的に攻撃を個人のドリブルに頼りがちだが、ブラジルは世界に先駆けてパスを多用するチーム戦術を追求してきた。6月の親善大会でも、サイドからゴール前に斜めのパスを送り、それをダイレクトでシュートする高難度のプレーにチャレンジ。彼らの組織的な攻撃がどこまで成熟しているかも、今大会の大きな注目点だ。
アルゼンチン、中国の争いにも注目
一方のグループB(アルゼンチン、メキシコ、ロシア、中国)は、順当に行けばアルゼンチンと中国の争いになる。準決勝でブラジルと対戦するのは避けたいので、首位通過の懸かる直接対決は、かなり激しい戦いになりそうだ。
ただし中国は体格の大きな相手を苦手としているのに加えて、ややチーム力が伸び悩んでいる印象もある。6月の親善大会では、モロッコ、アルゼンチン、ブラジルBとのグループで最下位。この大会には2020年東京大会でのメダル獲得を目指す日本も出場し、7-8位決定戦で中国から歴史的な初勝利を挙げた。日本の攻撃は見事なものだったが、かつては鉄壁だった中国の守備力にかげりが生じているのも否めない。メキシコとロシアはPKの決定力が高いので、ファウルを重ねて第2PKを多く与えれば、勝ち点を取りこぼす可能性もある。
今大会は、スペイン、フランス、イギリスといった欧州の常連国が予選で敗退。さらにアフリカ代表が初めて参加することもあって、実にフレッシュな顔ぶれとなった。この競技の裾野が世界規模で広がっている証拠だろう。さらなる発展のためには、初出場のモロッコ、メキシコ、ロシアの活躍も期待したいところである。
・編集注)開幕前、ロシアのドーピング問題による不参加が決まり、ロシアに変わりスペインが出場することになった。
text & photos by Hitoshi Okada